気分のコントロール術

うつ病と間違えないために
ここ数年はうつ病の認知度が向上し、心の病気の代表として理解が進んでいます。一定規模以上の職場で導入が進むストレスチェック制度も、うつ病の早期発見を目的にしていると言われるほどです。一方ではうつ病とよく似た症状を呈する病気が誤って判断されかねない面もあります。うつ病よりも患者数は少ないですが、双極性障害という病気は100人に1人が発症すると言われています。躁状態とうつ状態を交互に繰り返す点でうつ病と異なり、治療方法も決して同じではありません。うつ病では抗うつ薬を使った治療が有効ですが、双極性障害で抗うつ薬を使うと逆効果になる場合もあるのです。うつ病を疑って病院の精神科を受診する際には、うつ症状ばかりでなくそれ以前の状態についても医師に詳しく説明するといいでしょう。実際に双極性障害の症状は、うつ状態にあってはうつ病と区別がつきにくいものです。異なる点があるとすれば、うつ状態が必ずしも長くは続かないことにあります。うつを脱して調子が良くなったと感じ、仕事や趣味にも精力的に活動するようになります。しかしながらこの状態こそが、実は躁状態への移行を示しているかもしれないのです。双極性障害の躁状態にあるときは、自分では異常に気がつかないのが普通です。むしろ周囲の人が違和感を抱くことが多く、家族や職場の同僚・友人が患者さんに振り回される例も少なくありません。後でそうした行動に気がつき、しまったと思って後悔するものなのです。双極性障害で病院を受診する患者さんの多くは、うつ状態に入ってから自分で異常に気づいています。周囲の人の声に耳を傾けることで、自身の気分が不安定な点に気づくものなのです。
長く付き合える精神科医を
双極性障害にも双極1型障害と双極2型障害の2種類があります。躁病エピソードとも呼ばれる典型的な躁状態があるかどうかが、1型と2型との違いです。双極1型障害ではこの躁病エピソードの状態が1週間以上続き、家族や職場の人間関係にも大きな影響を及ぼします。双極2型障害は躁病エピソードが欠けている代わりに、軽躁病エピソードという比較的軽度の躁状態が4日以上続きます。人間関係に対する影響度も、2型は1型より低いのが特徴です。双極性障害とうつ病を見分けるためには、特に双極2型障害の症状を見抜く目が必要です。優れた精神科医は、うつ状態にある患者さんの口から軽躁病エピソードの記憶を上手に引き出してくれます。双極1型障害は気分の上下が激しい点に特徴があり、2型の方がうつ病に近いとも言えます。躁状態とうつ状態が頻繁に交替するラピッドサイクラーという症例もあります。このようにさまざまな様相を呈する双極性障害も、精神科の病院を受診することで正確な診断を得ることができます。どの症例でも治療の基本は薬物療法です。双極性障害は気分安定薬という薬で症状をコントロールできるため、診断さえ間違えなければ治療方針も揺るぎません。うつ病と比べて双極性障害の治療は、長い時間を要するのが普通です。気分安定薬は血圧の薬にも似ています。血圧の高い人が薬で血圧をコントロールしながら健康を維持しているように、双極性障害の患者さんも薬で気分をコントロールしていけばいいのです。この病気と共存していくためにも、病院の精神科医とは長い付き合いになります。双極性障害の患者さんにとって、優れた精神科医は人生の伴走者のような存在なのです。
Links
うつアカデミー
自分が双極性障害じゃないかどうか知りたいという方は、こちらのメディアサイトを見てみましょう。症状や治療に関する情報が掲載されています。
適した病院を探す

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返してしまい、態度や考え方が大きく変わっていきます。治療をしない限りは改善は難しく、専門医のいる病院ならばより詳しく診てもらえます。病院では双極性障害の改善にふさわしい治療が行われるので、上手に病気と向き合えるメリットがあります。